「パコと魔法の絵本」関口尚

涙はな、いっぱい泣いたら止まる

「パコと魔法の絵本」(関口尚)
 幻冬舎文庫

入院した大富豪の偏屈爺・大貫は、
絵本が好きな少女・パコと出会う。
ある日、勘違いからパコの頬を
叩いてしまった大貫は、
彼女が事故の後遺症で一日しか
記憶が持たない病気だと知る。
パコの心に何かを残そうと、
大貫は思い立つ…。

間違っても電車の中で
読んではいけません。
一人のときに読むべき本です。
なぜなら、涙が溢れてきて
止まらなくなるからです。

パコは交通事故の後遺症で、
1日しか記憶が保てない
記憶障害を持っているのです。
しかも両親は同じ交通事故で
亡くなっている、
何とも気の毒な少女なのです。
その事情を知り、
大貫は考えてしまうのです。

病院の行事、サマークリスマスで、
パコのために演じる芝居に奔走する、
大貫をはじめとする登場人物たち。
パコも泣かせてくれますが、
大貫も泣かせてくれます。
でも一番泣かせてくれたのは
不良看護婦・タマ子です。
挫折した元俳優の入院患者・室町に、
自分が今でも
室町のファンであることを
打ち明ける場面は、
何度読んでも泣けてきます。

本書を読み終えたあとで、
映画のDVDを観ました。
もっと泣けてきました。
素晴らしかったです。
役所広司の大貫はいかにも憎たらしい、
そしてどこまでも
優しい雰囲気を湛えています。
パコ役のアヤカ・ウィルソンは、
お人形のようにかわいらしい少女です
(彼女はその後、一時期
グリコのカフェオレかなんかの
CMに出ていたが、今どうしているやら)。
そして土屋アンナのタマ子は、
あの風貌でしっかり泣かせてくれます。

もっとも、本書も映画も、
舞台作品から
小説化・脚本化したようです。
その舞台のタイトルが
「MIDSUMMER CAROL
ガマ王子vsザリガニ魔人」。
つまり本作品は
ディケンズ「クリスマスキャロル」の
真夏版・現代版なのです。
たしかに「クリスマス・キャロル」同様、
偏屈老人が最後には
優しいお爺さんに変わっています。

それじゃあみんなで泣きましょう。
大人も子どもも本書を読んで
十分に泣きましょう。
そして大貫のセリフです。
「おい、あんた。
 あんまり泣いた経験がないだろ。
 じゃあ、
 涙の止め方もわからんだろ。
 涙はな、いっぱい泣いたら止まる」

※映画は色彩美鮮やか。
 DVDで買いましたが、
 Blu-rayで買い直したいと
 思いながらもはや数年。
 この映画はハイビジョン映像向けの
 作品だと思います。
 舞台も観てみたかったのですが、
 地方在住ゆえ、断念、残念。

(2020.5.25)

Anja🤗#helpinghands #solidarity#stays healthy🙏によるPixabayからの画像

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